Solution to Traffic Accidents交通事故解決ガイド

交通事故における後遺障害等級③~脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)

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【脳脊髄液減少症とは?】
「交通事故やスポーツ外傷等の後に、脳と脊髄を守っている脳脊髄液が漏れて減少することにより、頭痛、首や背中の痛み、めまい、倦怠、不眠、記憶障害などの様々な症状が複合的に発現する病気」などとされています。
交通事故の後に、この傷病名が付されて治療されておられる方を、時々、お見受けします。
有効な治療法として「ブラッドパッチ療法」(硬膜外自家血注入療法)があります。
※  熊本市周辺の方の場合、特定の病院の特定の医師の治療を受けている印象です。
 

【問題点~後遺障害等級について】
この疾患は「医学的な解明が進められている段階」であり「いまだ定まった知見や治療方法が確立していない」とされています。
交通事故の賠償実務においては、
脳脊髄液減少症の症状は「神経系統の機能又は精神の障害」として検討されるところ、
むち打ち後の頭痛等の原因が髄液の漏出によるものと証明されれば「9級までの後遺障害等級認定が可能となる」点に、
被害者が「『むち打ち後』に遷延する頭痛等を脳脊髄液減少症によるものと主張する実益がある」と言われています。
 
 
【実際にはどう扱われているのか?】
しかし、熊本県内を中心に、交通事故の被害者側の代理人を多くつとめてきた弁護士の経験からすると、
「脳脊髄液減少症に対する交通事故の賠償実務の扱いは、かなり冷たい」と言わざるを得ません。
加害者側の保険会社は、「脳脊髄液減少症」の傷病名が付されたとたんに、態度を急変させていた、ことが多いと感じます。
簡単に言えば、治療費の支払いを打ち切ったりする、ということです。
弁護士のところに相談に来られる方は、
この段階で「どうすればよいのか途方に暮れて」相談に来られることがしばしばです。

また、裁判になった場合、
裁判所は「医学的な診断基準とは関係なく、訴訟に現れた全証拠から自由な心証に従って、交通事故と被害者の症状や後遺障害との相当因果関係を認定できる」はずなのですが、
脳脊髄液減少症は「いまだ定まった知見や治療方法が確立していない」とされているためか、
残念ながら、裁判所も「否定から入っている」という印象を受けています。
※ しばらく前になりますが、「自由と正義」という書籍における論考で、脳脊髄液減少症が取り上げられていました。同論考が執筆されたころの裁判例は「事故による脳脊髄液減少症の発症を否定するものが大多数」とされており、弁護士の感覚としても、同じものがあります。
 
 
【被害者側は、どのように戦うべきか?】
私見ですが、
戦い方は、大きく分けて、
① 真正面から「被害者が事故により脳脊髄液減少症を発症し」「残存症状(もしあれば)は脳脊髄液減少症によるものである」と主張する。
② 脳脊髄液減少症と判断できるかは別として、「事故により『頭痛やめまいなど』を発症し」「治療を経ても、なお、症状(もしあれば)が残存している」と主張する。
の2通りのやり方があると考えています。
 
①は、裁判所などが認めるところになれば、より大きな賠償額を得られる可能性がある反面、後遺障害等級14級9号すら認められないリスクもある、と考えています。
また、経験則上、保険会社側が、大量の医学文献を証拠提出してくるなど、訴訟になった場合には、医学的な論争に持ち込まれる可能性が高いと思われます。
 
②は、特に、頚部痛なども生じていた場合、(経過診断書の記載などにもよりますが)後遺障害等級14級9号が認められる可能性はそれなりにあるものと思います。
しかし、その場合、賠償額は、一般的なむち打ち症後に頚部痛などを残した場合と、同程度に止まるものと思います。
 
裁判例をみると、被害者の症状は非器質性精神障害によるものだ、と判断するものがあるといったように、上記①②に限るものではありません。
また、あくまで、弁護士の個人的見解となります。
 
熊本県内を中心に、交通事故事件を、主として被害者側で扱う弁護士として、
裁判所は「脳脊髄液減少症に冷ややか過ぎる」と感じていますが、
「個々の事例における個別の救済」を受けるためにはどうすればよいか、といった個別の視点も忘れてはならないものと感じております。
 
※ 後遺障害等級14級9号「局部に神経症状を残すもの」

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