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むち打ち症をめぐって①医療照会書式「頚椎捻挫・腰椎捻挫の症状の推移について」

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【弁護士が考えるむち打ち症の根本的な問題点】
むち打ち症の後遺障害は、だいたいが神経症状の残存と思います。
この神経症状については、特に、後遺障害等級14級9号「局部に神経症状を残すもの」が問題になる場合、痛みや痺れといった症状が「目に見えるものではない」という根本的な問題があります。

そもそも、14級9号の場合、「局部に神経症状を残すもの」という字面を見ると、痛いとか痺れるとか言っている人は、みんな14級9号が認定される、というように読めなくもありません。
しかし、当たり前のことですが、実務上、本人が「痛い。」とひとこと言えば後遺障害が認定され、例えば、裁判基準の後遺障害慰謝料(14級の場合は110万円)がもらえ、更に、将来の収入減少に関する賠償(逸失利益)ももらえる、ということはありません。


【自賠責損害調査事務所の医療照会】
さて、むち打ち症の後遺障害等級認定申請にあたってですが、事実上、後遺障害を審査している自賠責損害調査事務所が医療照会をかけることがあります。
 
自賠責損害調査事務所の判断傾向も「時期によって違う」ので、平成30年7月現在での話ですが、初回の等級認定申請の結果が、後遺障害等級「非該当」の場合、異議申立をすると、医療照会が行われることが多い印象があります。
 
自賠責被害者請求をした場合は、請求者に医療照会の「同意書」が送付され、「同意書」を返送すると、自賠責損害調査事務所から、「頚椎捻挫・腰椎捻挫の症状の推移について」の書式を用いて、治療していた医療機関に医療照会が行われる流れです。
 
そして、「頚椎捻挫・腰椎捻挫の症状の推移について」における医師回答は、後遺障害等級14級9号「局部に神経症状を残すもの」の判断に大きな影響を与えていると思われます。
 

【どんな回答がなされ、問題となるか?】
「頚椎捻挫・腰椎捻挫の症状の推移について」の医師回答ですが、
「初診時(症状出現時)から終診時までの推移」という欄には、頚椎捻挫について言うと、「項頚部痛」や「頭痛」などの各症状について、「消失・軽減・不変・増悪」の4種類の回答が示されています。
医師としては、この4つの選択肢から、1つを選択して、回答するわけです。
うち、「消失」の場合は、治療していたら症状がなくなった場合ですから、完治した場合と思います。
例えば、頚椎捻挫の場合でいうと
「項頚部痛」は「不変」だが、その周辺症状である「頭痛」については症状が「消失」した、という場合はあるでしょうが、中核症状であろう「項頚部痛」については、後遺障害の申請をしている以上、「消失」ということはあまりないと思います。

「増悪」も、あまり見かけませんので、だいたいの問題は、「軽減」か「不変」かです。


【「軽減」回答vs「不変」回答】 
治療で症状が軽減していないということはあまりないと思うので、厳密に考えると「軽減」との回答になると思います。
一方、時間の経過とともに、例えば、梅雨時に痛みが強くなったり、梅雨が終わって痛みが少し軽くなったりしても、大幅には改善していない場合は、「軽減」とまでは言えないだろう、と考えると、症状がそれなりに残っている場合は「不変」との回答になると思います。
 
言葉遊びのような話ですので、結局は、医師次第としかいいようがないと思います。
 
ところが、自賠責損害調査事務所は、「不変」と回答があれば、後遺障害を認める方向に傾き、「軽減」と回答された場合は、症状が軽減方向にあるのだから、後遺障害が残るはずがない、というような、よく分からない理由で、後遺障害等級「非該当」との判断をしがちです。
 
弁護士に言わせると、そのような言葉遊びのようなところで(極論すれば、通院した病院の医師が、どちらに○をつけるかで)、後遺障害の有無を判断するきらいがある、自賠責損害調査事務所の思考方法には疑問を感じています。


【結局、何が問題なのか?】 
熊本を中心に、交通事故事件を多く扱い、多くの症例を見ていると、例えば、
この病院のこの医師は「軽減」と書きがちだ、とか(だからといって軽症ではない。)、
自賠責損害調査事務所の「頚椎捻挫・腰椎捻挫の症状の推移について」の設問の仕方には、根本的な問題があるとかが、分かってきます。
(熊本にフォーカスして交通事故事件を扱っていると、すべてではないですが、病院や医師の傾向も、ある程度は把握できてきます。)

しかし、自賠責損害調査事務所の段階で、後遺障害等級認定を取得できないと、示談では後遺障害がない前提となりますので、満足できる解決は難しいです。
(なお、自賠責保険・共済紛争処理機構に持ち込むという手段もあります。)
そうなると、最終的には、裁判所に救済を求めることになります。

※ 裁判官は、自賠責保険の認定には拘束されませんので、自賠責保険で後遺障害等級が認定されていなくても、後遺障害を認定して損害賠償額を定めたり、反対に、自賠責保険で後遺障害等級が認定されていても、裁判で後遺障害を否定することもできます。
いなば法律事務所でも、例えば、自賠責損害調査事務所の認定が後遺障害等級「非該当」であった交通事故で、熊本地方裁判所において、訴訟で争い、後遺障害等級3級の認定を受けることができた事例もあります。
この交通事故では、被害者家族に感謝のお言葉をいただき、たいへん嬉しく思いました。

しかし、後遺障害の有無をめぐって訴訟になった場合、裁判官は、多くの症例を見ていないと、「頚椎捻挫・腰椎捻挫の症状の推移について」のいい加減さ(反面、結果に与える影響は大きい)には、なかなか気が付かないと思います。
  
弁護士経験がある程度、積み重なると、裁判官によって、実力・経験・考え方などがかなり違うことが分かって来ます。
その交通事故事件があたった担当裁判官に、実力と経験があり、事案ごとにきちんとした判断ができれば良いのですが、裁判所も、自賠責損害調査事務所の判断を追認する傾向にあります。

後遺障害が残っているのに、自賠責損害調査事務所(や自賠責保険・共済紛争処理機構)の段階で、納得いく認定が得られない場合は、裁判所に救済を求めるべきですが、自賠責損害調査事務所の段階で、後遺障害等級が認定されるに越したことはないので、
「頚椎捻挫・腰椎捻挫の症状の推移について」に対する医師回答には、注意が必要と思います。
 

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